アドボカシーマーケティングは、広告費が高騰し、消費者が「企業の発信」を信じなくなった現代において、「最後の切り札」とも言われる重要な戦略です。
アドボカシーマーケティングとは?
突然ですが、あなたは次のどちらを信じますか?
企業が流す「この商品は最高です!」というテレビCM
親友が言った「あの店のラーメン、スープが絶品。絶対食べた方がいいよ。」という言葉
ほとんどの人が、2番(親友の言葉)を選ぶはずです。

友達もそうだし、インフルエンサーや口コミも参考にすることが多いかな

特に、Z世代と呼ばれる人たちは、その傾向が強いといわれているね
代の消費者は、企業の「売り込み」には耳を塞ぎますが、信頼できる第三者の「推奨」には身を乗り出します。
この「信頼の力」をエンジンとするマーケティング手法が、「アドボカシーマーケティング(Advocacy Marketing)」です。
アドボカシーマーケティングの考え方は、何も新しいものではありませんが、近年、注目を集めています。
なぜでしょう?
その理由を理解するためには、少し、企業と顧客の関係性の歴史を少しひも解く必要があります。
1990年代まで、企業と顧客の関係は「キツネとタヌキの化かし合い」のような側面がありました。
今の若い人たちには少しイメージしにくいかもしれませんが、インターネットやSNSが普及していない当時は、情報の主導権を握っている企業は、その気なれば都合の悪い情報を隠すことができ、顧客もそれを知る術がなかったのです。
テレビCMなどで一方的に情報を浴びせ、「買わせる」時代。
そして、企業が顧客データを管理し、囲い込む時代。
そんな中、2000年代初頭、このような状況が大きく変わる出来事が起きました。
インターネットの普及による「情報の非対称性」の崩壊です。
ちょっと難しい表現ですが、これまで情報を握っていたのは企業だけだったのが、一般の消費者・顧客もインターネットを通じて様々な情報にアクセスできるようになり、それが崩れたということです。
この歴史的転換点において、MITスローン経営大学院の名誉教授、グレン・アーバン(Glen Urban)氏は、こう主張しました。
「企業は、顧客の代理人(Advocate)にならなければならない」
アドボカシー(Advocacy)とは、元々法律用語で「弁護」や「擁護」を意味します。
彼が言いたかったのは、「自社の商品を売り込むのではなく、弁護士が依頼人を守るように、徹底的に顧客の利益のために動くべきだ」ということでした。
たとえ、「お客様には、自社製品より他社製品の方が合っていますよ」と競合を薦めることになったとしても、です。
これはちょっと極端な考えに見えますが、最近の企業と顧客の関係性を見るとあながち間違ってもいないかもしれません。
いずれにせよ、アーバン教授は、企業の一方的な売り込みや囲い込みの時代は終わりをつげ、インターネットで全ての情報を手に入れた顧客にとって嘘やごまかしは通用せず、真に顧客の味方になる企業だけが信頼される時代となったと説明します。
かつてのように、企業は不都合な情報を隠して商品を売ることはできません。
顧客は店の前で価格比較サイトを見き、レビュー動画やSNSで欠点を知ることができるからです。
「満足の先」を目指す
もちろん、これまでのビジネスにおいても「顧客満足(CS)」は重要視されていました。
しかし、アドボカシーマーケティングでは、満足のその先にある「顧客推奨(Customer Advocacy)」をゴールに設定します。

目指すのは、単なる「満足」ではなく、「ヤバい!」「すごい!」「大好き!」といった、理屈を超えた熱狂的な好意だ。

まるで「推し活」みたいだね

顧客がブランドのファンになり、「この良さを誰かに伝えたい!」「もっと応援したい!」と自発的に動いてくれる状態を目指すのが重要ということだね。
従来のマーケティングには、広く集客して購入者を上から下にかけて絞り込む「ファネル(漏斗)」という図式がありましたが、アドボカシーマーケティングの発想は、をひっくり返します。
広く浅く集めるのではなく、購入してくれた既存顧客(底)を徹底的に大切にする。
そうして生まれた熱狂的なファンが、新たな顧客を連れてきてくれる。
つまり、既存顧客を起点に、上(新規顧客)へと裾野が広がっていくモデルを作るのです。
「サクラ」や「ステマ」ではない
注意が必要なのは、「サクラ」や「やらせ」はダメ!ということです。
金銭を渡して良い口コミを書いてもらうのは「ステルスマーケティング(ステマ)」であり、現代の消費者に最も嫌われる行為であり、最悪、炎上やブランディング失墜のリスクもあります。
アドボカシーマーケティングの本質は、「応援したくなるような企業姿勢」にあります。
商品の品質はもちろんですが、サポートの丁寧さ、企業のビジョンへの共感。
さらには、情報発信の方法やSNSでの対応など、「姿勢」そのものを見られれるのです。
あらゆる面で積み重ねた「誠実さ」や「信頼」が、本物の支持者を生み出していくといえるでしょう。
頼まれなくても友人に勧めてくれるファンが何人いるか?
その人数こそが、これからの時代を生き抜くための大きな「資産」です。
新規獲得に走る前に、まずは目の前の一人を、徹底的に感動させてみる。
そこから、最強のマーケティングが始まるかもしれません。



