
今日は人間の根源的な欲求に踏み込むよ。
人間が行動を起こす動機は、突き詰めるとたった2つしかない。
なんだと思う?

うーん……。『お金が欲しい』とか『モテたい』とか?

それは表層的な欲求だね。
生物としての根源は、『痛みを避けたい(Pain)』か『快楽を得たい(Pleasure)』か。このどちらかだ。
特にマーケティングの世界では、利益を得る喜びよりも『損失を被る恐怖』の方が2倍強く作用するという『損失回避の法則』を活用するフレームワークが多い。
だから、まずはこの『痛み』を巧みに扱うフレームワークから学んでいこう
PASの法則
PASONAの法則の解説の前に、コピーライティングの古典にして、最もコンバージョン率が高いとも言われる『PAS(パス)の法則』をおさらいしておきましょう。BABの法則でも触れましたね。

Problem、Agitation、Solutionの頭文字をとったもので、いわば『傷口に塩を塗る』ようなアプローチだ。
まず第一段階の「Problem(問題)」で、読み手が抱えている悩みや痛みを言語化し、「最近、お腹の脂肪が落ちにくくなっていませんか?」といった具合に、ターゲットを特定して「これは私のことだ」と認識させます。
そして、次が「Agitation(扇動)」です。
提示した問題を放置するとどうなるか、そのリスクや将来の恐怖を徹底的にあぶり出し、「そのまま放置すると、血管年齢はどんどん老化し、ある日突然……」といったように、あえて聞き手の不安を煽り、感情を揺さぶるのです。
これによって、読み手の中に「今すぐなんとかしなきゃマズイ!」という緊急性が生まれることを狙います。
高まりきった不安と緊張を一気に解消する唯一の救済策として、最後に「Solution(解決策)」を提示します。
「でも、このサプリがあれば大丈夫」と提示することで、商品への欲求と依存を誘発しようとするのです。

こうやって改めて聞くとちょっと怖い手法だね
やりすぎると嫌われそう

その感覚は正しいよ。
だからこそ、PASには、Benefits(利益)とOptimisation(最適化)を付け加えて論理的な裏付けを強固にした『PASBO(パスボ)』や、Outcome(結果)と Proof(証明)も提示する『PASOP(パソップ)』といった派生形も存在する。
だが、本質はネガティブな感情のコントロールにあることは変わらない。
PASONAの法則とは

『やりすぎると嫌われる』という感覚は、まさにその通りで、現代の消費者は過度な恐怖訴求に疲れ切っている。
そこで生まれたのが、日本の神田昌典氏が提唱した『PASONA(パソナ)の法則』、それも時代に合わせてアップデートされた『新PASONA』だ
かつての「旧PASONA」は、PASと同じくAgitation(煽り)を重視していました。
しかし、新モデルでは、この部分が大きく変わりました。
Problemで問題を提起したあと、次にくるのはAgitationではなく「Affinity(親近感)」なのです。

親近感?塩を塗るのではなく?

そう。恐怖で脅すのではなく、『わかります、私も同じことで悩んでいました』と寄り添うんだね。
煽りは、どこか顧客を『支配』しようという構造を含んでいる。
一方で親近感は『横並び・共感』の構造だね。
現代のマーケティングでは、顧客と対等な関係を築くことが重要だ。
この『共感』のプロセスは不可欠なんだよ。
その上で、解決策である「Solution」を提示し、さらに単なる解決策だけでなく、特典や保証などの具体的な「Offer(提案)」を行います。
そして対象者を絞り込んで緊急性を出す「Narrowing down(絞り込み)」を経て、最後の「Action(行動)」へと導く。
これが、恐怖に頼らずに人を動かす、現代の日本市場に適したフレームワークと言われています。
あらためてBAB(バブ)の法則を見てみる

最後にもう一度、以前触れた『BAB(バブ)の法則』を、この文脈で捉え直してみよう。
PASが『過去や現在の痛み(Pain)』に焦点を当てて背中を蹴飛ばす手法だとしたら、BABは『未来の快楽(Pleasure)』を見せて手招きする手法だ
まず「Before(以前)」で現状の課題を描写するのは同じです。
でも、次にくるのは恐怖ではなく、「After(以後)」。
つまり課題が解決されたキラキラした理想の未来を想起させます。
「ダイエットに成功して、あの頃のスカートが余裕で入るようになった自分」を想像させる。
そして、その現状と未来のギャップを埋める「Bridge(架け橋)」として商品を提示します。

PASの話を聞いた後だと、バブがとても可愛く思える

特に美容やキャリア形成など、『なりたい自分』という自己実現欲求が強い商材には、恐怖訴求よりもこのBABの方が相性がいいとされる。
読者は商品そのものを買っているんじゃない。
商品によってもたらされる『変容した新しい自分』を買っているということだね。
PASで痛みを煽るのか、PASONAで共感して寄り添うのか、BABで期待・高揚させるのか。
扱う商品とターゲットの心理に合わせて、この3つを使い分けることが重要です。



