エンドウメント効果とは?意味と定義を3分で解説【マーケティング用語辞典】

行動経済学

「30日間、全額返金保証!」

「ご自宅で7日間、無料で試着できます」

テレビショッピングやネット通販でよく見るこのフレーズ。

企業側にとって、返品のリスクは怖くないのでしょうか?

T太
T太

「とりあえず注文して、気に入らなかったら返せばいいや」と返品の山になったりしないのかな?

編集長
編集長

実は、そうならないことを企業は知っているんだよ。

一度商品を手元に置いた顧客は、そう簡単にはそれを手放さないという事実を…

エンドウメント効果の意味と定義

エンドウメント効果(保有効果ともいいます)は、1980年にリチャード・セイラー(後のノーベル賞受賞者)が提唱した概念で、「自分が所有している物の価値を、所有していない場合よりも高く見積もってしまう心理傾向」のことです。

皆さんも経験があるはずです。

店に並んでいる商品は「ただの商品」。

でも、一度自宅に持ち帰って、自分のテーブルに置いた瞬間、それは「私の商品」に変わります。

心理的な愛着が湧き、いつの間にか自分の中で価値が上昇しているのです。

この心理を証明した有名な実験があります。

学生を2つのグループに分けました。

  1. 【売り手グループ】: マグカップを与えられ、「いくらならこのカップを売ってもいいか」と聞かれる。

  2. 【買い手グループ】: マグカップを見せられ、「いくらならこのカップを買いたいか」と聞かれる。

合理的に考えれば、同じカップなのだから金額は近くなるはずですよね。

ご想像の通り、結果は異なりました。

  • 買い手の平均額: 約3ドル

  • 売り手の平均額: 約7ドル

一度自分のモノにしてしまった学生は、そうでない学生の「2倍以上」の価値を感じていたのです。

これが、私たちが断捨離できなかったり、中古品を高く売りすぎたりする原因です。

裏にあるのは「喪失の痛み」

なぜ、こんなことが起きるのでしょうか? ここには、他の記事でも紹介した「プロスペクト理論(損失回避性)」が深く関わってるといわれています。

人は「何かを得る喜び」よりも「何かを失う痛み」を強く感じます。

売り手にとって、カップを売ることは「自分の持ち物を失う(損失)」ことになりますから、その痛みをカバーするためには、高い金額(報酬)をもらわないと割に合わないと無意識に感じてしまうのでしょう。

ちょっと難しい話ですが、仏教心理学には「我所(がしょ)」という概念があります。

これは「自己の所有物」という意味です。

人は何かを手に入れると、それを単なる「物体」としてではなく、「自分の一部」として認識し始め、執着が生じる原因となる、としています。

店にある服は、ただの布に過ぎなかったのに、自分で買った服、実際に着た服は私の一部となるのです。

これはモノに限りません。恋人などの人間関係にも当てはまるでしょう。

「私の一部」になってしまったからこそ、それを手放すことは、まるで自分の身を削がれるような痛みを伴います。

行動経済学の世界では、これを「損失回避」とも言います。

こう考えると、私たちがなかなか断捨離できない理由がよくわかりますよね。

私たちは「物」を捨てられないのではなく、物に投影された「拡張された自分」を捨てられない、ということです。

ビジネスにおける「疑似オーナー体験」

この効果をビジネスで活用している事例は数多くあります。

例えば、試着・試乗・試食やサブスクの無料期間などです。

NetflixやAmazonプライムが「初月無料」にするのは、味見のためだけではありません。

1ヶ月使い続けることで、そのサービスが「生活の一部」になり、解約することに心理的な抵抗が生まれるのです。

言葉で説明するよりも、まずは「触れさせる」「持たせる」「体験させる」。

多少のコストをかけてでも企業が無料体験や試用を勧めるのには、このような背景も隠されています。

「エンドウメント」から自由になる

とは言っても、買うつもりはなかったのに試しに使ってみたら、つい買ってしまった、と後悔された経験をお持ちの方も多いでしょう。

では、どうすればこの「保有効果」や「執着」から自由になれるのでしょうか?

ビジネスや生活で使えるヒントが2つあります。

① 「もし持っていなかったら?」と問いかける

何かを捨てるか迷った時、「もし今、これが無くなったら、もう一度お金を出して買い直すだろうか?」と自問してみてください。

「いや、買い直さないな」と思ったなら、それは今のあなたにとって必要な価値ではなく、単なる「執着」といえます。

② 「預かりもの」と考える

仏教的な視点ですが、すべての物は一時的に自分の手元にあるだけの「預かりもの」と考えてみます。

諸行無常の考え方です。

あの世まで持っていけるお金も、時計も、服も、車もはありません。

「私のモノ」というラベルを一度剥がしてみましょう。

「今、たまたまここにあるモノ」として見てみる。

そうすることで、過剰な価値付けや執着がスーッと消えていくことがあります。

心のバイアスを知る

マーケティングの世界では、この心理を利用して「試着」や「返金保証」で一時的に「保有」させ、商品の価値を錯覚させようとする戦略は当たり前に使われています。

T太
T太

それを知っていたとしても、何かが欲しいときってどうにもならないんだよなあ…

編集長
編集長

ただ、それでも「これは『我所』への執着だな」「あ、今、保有効果が働いているな」と、ちょっとだけ意識する。

それだけで、私たちは無駄な買い物や、部屋を埋め尽くす不用品から、少しだけ自由になれるかもしれないよ。

この記事を書いた人
Neuviate

早稲田大学中退後、輸出入事業やIT事業など、多岐にわたるビジネスの現場で失敗と成功を繰り返しながら実務経験を積む。その後、教育系事業の広告・マーケティングに従事し、実践的なノウハウを体系化。同事業で培った実績をもとに独立を果たす。独立後は、豊富な経験を活かし、物販事業、士業の集客コンサルティングを専門に手掛けている。
著書に『高校生のマーケティング大全: AI時代を生き抜く最強の脳内OSをインストールする』がある。」

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