街を見渡すと、似たような商品を売っているのに、共存しているお店がたくさんあります。 例えば、コーヒーチェーン。
「スターバックス」のすぐ近くに「ドトール」や「コメダ珈琲」があっても、どのお店も繁盛していますよね。

なぜ、お客の奪い合いで共倒れしないの?

それは、彼らが見事に戦う土俵をズラしているからだ。
STPは、どんな土俵で、どのように戦うかを判断するためのフレームワークだよ。
STPとは?
STPは、マーケティング戦略を立てる際の3つの手順の頭文字です。フィリップ・コトラーが提唱しました。
Segmentation(セグメンテーション)
市場を細分化する (ケーキを切り分けるように、市場を「似た者同士」のグループに分ける)
Targeting(ターゲティング)
ターゲットを絞る (切り分けた中から、「このグループに売る!」と決める)
Positioning(ポジショニング)
立ち位置を決める (ターゲットに刺さる商品やサービスの提供、企業としての立ち振る舞いを決める)
簡単に言うと、「広大な市場の中で、自分が一番になれる『特等席』を見つける」ためのフレームワークです。
なぜSTPが必要なのか?
それは、ビジネスにおける資源(ヒト・モノ・カネ)は有限だからです。
限られた資源をやりくりして、 全ての人に好かれようと中途半端な商品やサービスを作っても、特徴のない「平均的な商品」になり、誰の心にも刺さらず競合に勝つことも難しいでしょう。
STPの目的は、 戦場を限定することです。
「自社が勝てる場所」を見つけ出し、そこに戦力を集中させるのです。
そうすることで、大企業相手でも局地戦で勝利することが可能になるのです。
SPT分析の流れ
①【S→T】「捨てる」
最初のステップ「S(セグメンテーション)」は、「顧客セグメンテーションとは?」の記事で触れましたが、市場を年齢や価値観で切り分ける作業です
次に重要なのが「T(ターゲティング)」。
ここは、「誰に売るか」を決める作業であると同時に、「誰には売らないか」を決める作業でもあります。
例えば、10分1200円のカット専門店『QBハウス』。
彼らは「忙しいビジネスマン」をターゲットにしました。
その代わり、「シャンプーしてほしい人」「会話を楽しみたい人」という顧客はバッサリと切り捨てました。
この「捨てる勇気」があったからこそ、「早くて安い」という強力な価値を作れたのです。
②【P】脳内に「旗」を立てる
最後の「P(ポジショニング)」が、最も重要で難しいパートです。
市場を切り分け(セグメンテーション)、狙う相手(ターゲット)を決めた。
しかし、それだけでは商品は売れません。
なぜなら、そのターゲットを狙っているライバル企業は他にも山ほどいるからです。
ポジショニングとは、数ある競合の中で「自社独自の立ち位置」を定義し、ターゲットに適した戦略や振る舞いを決定するプロセスのことです。
このプロセスが実を結べば、「〇〇といえばこの会社!」と想起されるような、市場における第一人者の地位を築けるでしょう。
では、どのようにポジショニングを決定すればよいのでしょう。
まずやるべきは、「ポジショニング・ステートメント(定義書)」を作ることです。
これは、以下の4つの要素で構成されます。
- Who(ターゲットは誰か): 例)時間がなく、手軽に栄養を摂りたいビジネスマンに対して
- What(カテゴリー): 例)完全栄養食のパンとして
- Benefit(提供価値): 例)調理不要で、1食に必要な栄養素をすべて摂取できる価値を提供する
- Reason to Believe(信じられる根拠): 例)管理栄養士監修のデータと、特許製法に基づいているため
この定義が固まって初めて、「じゃあパッケージは機能的にしよう」「広告はビジネス誌に出そう」という具体的な行動が決まります。
また、ポジショニングを定義するためには、横軸と縦軸を使ったマトリックスで考えるのも有効です。
これを視覚化したポジショニングマップもよく使われます。
ちなみに、マーケティングには以下の頭文字をとった「4P(マーケティング・ミックス)」という言葉があります。
- Product(製品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(販促)
ポジショニングは、この4Pを決めるための「憲法」にもなります。
というよりも、ポジショニングが決まらなければ、これらを決めることができません。
例えば、あるカフェが「多忙なビジネスマンのための、最高効率のエネルギー補充スペース」というポジショニングを定義したとします。 すると、商品・サービスについてこう決めることができます。
- 製品: 繊細なハンドドリップではなく、マシンで秒速で出せるコーヒーにする。
- 価格: 毎日通える低価格にする。
- 場所: 景色の良い公園ではなく、駅ナカに出店する。
- 接客: 笑顔の会話ではなく、ICカードで一瞬で決済できるスピードを重視する。
もしこのポジショニングが曖昧だと、「効率重視」なのに「店員が世間話をしてレジが混む」といったチグハグなサービスが生まれ、顧客は離れていきかねません。
ターゲット顧客は、常に「競合」と比較しています。
ポジショニングを決定するプロセスにおいては、競合と比較されたときに「なぜ他社ではなく、あなたを選ぶ必要があるのか?」という問いへの明確な答え(KBF / Key Buying Factor):購買決定要因」を用意することも重要です。
- 「あそこは安いから(価格優位)」
- 「あそこは早いから(利便性優位)」
- 「あそこは品質が圧倒的だから(製品優位)」
この「選ばれる理由」を絞り込み、それを実現するために社内のリソースを集中させるのです。
ポジショニングとは、単なるキャッチコピーを作る作業ではなく、「私たちは誰のために存在し、誰のためには存在しないのか」「お客のためにどのような商品・サービスを提供するのか、そして、どう振る舞うのか」という、企業のアイデンティティそのものを決定する作業です。
この定義に基づいて、商品、価格、接客、広告など、すべての企業活動が一貫したとき初めて、顧客の脳内に「〇〇といえばこの会社!」というブランドの力が生まれます。
STPはビジネスの設計図
STP分析は、 「どの市場を切り取り(S)、誰に狙いを定め(T)、どう思われたいか(P)」を決める、ビジネスの設計図そのものです。
もし売上に伸び悩んだら、一度立ち止まって考えてみてください。
「私は今、誰のために、そして、市場のどこに自分の旗を立てるべきなのか」と。



