ブランドエクイティとは?
直訳すると「ブランド資産」
なんとなくイメージしやすいですが、同時に、ふわっとしてつかみどころのない概念でもあります。
1980年代、マーケティング学者のデビッド・アーカーらが提唱したこの言葉は、マーケティング用語の中でも特に重要なもののひとつです。
彼らは、その理論の中で、それまで経費として消えてなくなるコストと考えられがちだった広告宣伝費に対して、「違う。それはまるで貯金のように顧客の頭の中に積み立てられる。いわば資産だ」と主張しました。
工場や在庫といった「目に見える資産」と同じように、「目に見えない資産」としてのブランドが将来にわたって安定的に収益をもたらし続ける、と訴えたのです。
例えば、真っ白な無地のTシャツが1,000円で売られています。 これに、有名なスポーツブランドのロゴをプリントした瞬間、価格は5,000円に跳ね上がります。 布の品質は全く同じなのに、です。
また、コンビニでお茶を買う時、無数にある商品の中からどうやって1本を選んでいますか? 成分表を熟読して比較検討する人は稀でしょう。 ほとんどの人は、「あ、いつものアレ(お〜いお茶、伊右衛門など)」と、0.5秒で手に取ります。なぜ、迷わずに選べるのか。 それは、あなたの脳内にその商品の「ブランドエクイティ」が築かれているからです。
ブランドエクイティが持つ力
ブランドエクイティは、消費者がそのブランドに対して持つ「プラスのイメージ」や「信頼」の総体とも言えます。
人間は、毎回の買い物で悩みたくありません。
思考コストや判断コストを削減したいという習性があるからです。
また、無名のメーカーのものを選んで失敗するリスクを恐れます。
「このロゴがついているなら、品質は間違いないだろう」
「あのメーカーなら、アフターサポートも安心だろう」
このように、ブランドエクイティが高い状態では、顧客の脳内に「これを買っておけば失敗しない」というショートカットができているのです。
ブランドエクイティの4つの柱
では、この資産の中身は何でできているのでしょうか?
アーカーは主に以下の要素を挙げています。
ブランド認知(Brand Awareness):そもそも 知られているか?ということ。
知覚品質(Perceived Quality): 良いと思われているか? ということ。実際の品質ではなく、顧客が「良さそう」と感じるイメージのことです。
ブランド連想(Brand Associations): 何をイメージするか? 「革新的」「高級」「親しみやすい」など、そのブランドや会社を見たときに想起される独自のイメージを持っているか?ということです。
ブランドロイヤルティ(Brand Loyalty): そのブランドに愛着があるか? ですが、これが最も重要です。他の競合に浮気せず、「次も絶対これを買う」というファンになっているか?ということ。このブランドロイヤルティが強い企業としては、Appleが代表的ですね。
これらが積み上がるとどんなメリットがあるか。
わかりやすいのは、企業が「価格競争」から抜け出すことができる点です。
他社より高くても、「あなたから買いたい」と言われる状態は、非常に強いアドバンテージとなります。
新商品を出す時も、ゼロから説明せずとも勝手に認知してくれ、良いイメージを持ってくれるので、売りやすいでしょう。(もちろん、残念な商品を出してブランド貯金を使い果たすリスクもありますが)
いずれにせよ、高い水準でブランドエクイティを築けたら、その企業や商品は、いわば勝ちのサイクルに入ったといえるでしょう。
ブランドに傷をつけないための努力はもちろん必要ですが、ビジネス戦略の幅は大きく広がります。



