
今日は、あまりにも有名で、マーケティングを知らない人でも聞いたことある言葉「4P」について解説する。

知ってる!
Product, Price, Place, Promotionの頭文字だね。

E.ジェローム・マッカーシー(E. Jerome McCarthy)が提唱したこのフレームワークは、マーケティングの基本中の基本の概念だが、だからこその難しさがある。

用語の意味は分かるけど、実際の使い方ってよくわかってないかも…

基本だからこそ非常に抽象的な概念。
ビジネスを進めるうえでのいわば「整理棚」とも言える。

「そこに何を入れていくか」が大切ということだね。

そうだね。
今日は、マッカーシーの4P、対になるロバート・ローターボーン(Robert F. Lauterborn)の4C(Customer Value, Cost, Convenience, Communication)を使いこなすために、その手前で「本当に学んでおくべき理論」との関係性を解き明かしていこう。
Product(製品)× Value(価値)
製品について考えるとき、大前提となるのが、「誰の、どんな課題を解決するのか?」ということです。
そして、これを決めるために有効なのが、マーケティングの父、フィリップ・コトラー(Philip Kotler)が提唱・整理した概念であるSTP分析です。

「誰の役に立ちたいか」が決まっていない製品は、誰にも刺さらないからね。
この他にも、ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン(Clayton M. Christensen)教授が提唱したジョブ理論も役に立ちます。製品が顧客のどのような課題をどのようなシーンで解決しているかを分析し、それを満たす製品・サービスを構想する理論のことです。
Price(価格)× Cost(コスト)
「安くすれば売れるだろう」という安易な値付けは、ビジネスを破壊します。
適切なPrice(顧客にとってはCost)を決めるには、「会計」と「心理」の両方の側面から考えることが重要です。
例えば、管理関係の基礎的考え方であるユニットエコノミクスに基づいて価格を検討することが重要です。
ユニットエコノミクスとは、1個の商品だけに注目して、費用や利益が出るかを算定する概念です。
また、LTV(顧客生涯価値)やCAC(獲得コスト)を考えずに値付けすることは自殺行為と言えるでしょう。
また、消費者の心理や感情について洞察して値付けすることも大切です。
ノーベル経済学賞受賞者、ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)らが提唱した「人間は利益の喜びより、損失の痛みを大きく感じる」というプロスペクト理論や、「松竹梅の法則(アンカリング)」など、人間が価格をどう感じるかの心理学を知らなければ、最適なプライシングはできません。

Priceの枠を埋めるには、「利益を出すための計算」と「欲しくなる心理」の知識が大切なんだね。

会計や行動経済学の知識だね。
Place(流通)× Convenience(利便性)
Placeは、単なる「売り場」のことを考えることではありません。
「顧客が商品と出会い、手に入れるまでの体験」を設計することです。
顧客体験を上げることによって、顧客にとってはConvenience(利便性)を向上させることにつながります。
オックスフォード大学などの研究でも、顧客体験(CX)の向上が収益に直結することが示されています。
そして、顧客が認知し、興味を持ち、購入し、再購入するまでのプロセスを時系列で可視化する手法として、カスタマージャーニーを設計することが有効です。
またECサイトなどオンライン上の流通を考えるとき、認知科学者ドナルド・ノーマン(Donald Norman)が提唱したUXデザイン(ユーザー体験)を向上させることも重要でしょう。
そのためには、「ここでクリックさせるのは面倒だ」「ここでは安心させないと離脱する」といった、人間の認知特性に基づいた設計スキルが必要です。
Promotion(販促)× Communication(コミュニケーション)
Promotion(顧客にとってはCommunication)を成功させるには、特に、「言葉の力」と「媒体の特性」を知ることがポイントです。
「広告の父」と呼ばれるデビッド・オグルヴィ(David Ogilvy)は、「広告はエンターテイメントではなく、セールスマンシップだ」と説きました。
カナダの文明批評家マーシャル・マクルーハン(Marshall McLuhan)は「メディアはメッセージである」と訴えました。
Promotionの枠を埋めるには、「人の心を動かす言葉」と「届ける手段(メディア)」への深い理解が不可欠です。
4Pで整える
こうして見ると、基本中の基本である4P/4Cは、最初に学ぶべき重要事項であると同時に、実践の場においては、様々に学んだスキルやフレームワークを束ねて整えるための役割とも言えます。



