
Amazonの創業者であるジェフ・ベゾス氏は、創業当時、会議には空席の椅子を一つ用意していたそうだ。

なぜ?

もっとも重要な人物がそこにいることを想像しながら会議を行うため。

それは「顧客」だ。
ペルソナとは?
ペルソナとは、「自社の商品を使ってくれる(あるいは使ってほしい)、最も象徴的な架空の人物像」のことです。
これは、自分の脳内、チーム間の会議やコミュニケーションにおいて、ベゾス氏の空席の椅子を用意するようなものです。
ちょっと違うのは、ペルソナは、名前や趣味嗜好まで設定して、まるで実在する人物かのように設定すること。
もともと、この概念は1990年代に天才プログラマーのアラン・クーパーによって提唱されました。
当時のソフトウェア開発の現場において、エンジニアたちが商品のユーザー像を自分に都合よく捻じ曲げることで開発が難航したり、商品の品質に影響が出ることに腹を立て、クーパーはこの考え方を導入しました。
彼は架空のユーザー「キャシー」を生み出し、年齢、仕事、PCスキル、そして「何にイライラするか」まで詳細に作り込みました。
開発中に「この機能はどうする?」と揉めたら、エンジニアの好みではなく、「キャシーならどうする?」を基準にしました。
その結果、機能は減りましたが、驚くほど使いやすいソフトが生まれ、爆発的にヒットしました。「全員」を捨てて「一人」に絞った方が、結果として多くの人に愛される、という逆説が証明されたのです。

顧客セグメンテーションやターゲッティングは性別や年齢などの大きな属性で顧客を分類する。
対して、ペルソナは「一人の顧客を定義する」ということだね。
ペルソナの利点
ペルソナには大きく次の利点があります。
- 一人の顧客像に対する分析を徹底的に行うことで、顧客理解が深まる。
- 関係者間で共通の顧客像を定義することで、ブレない議論・コミュニケーションや商品開発が実現できる
名前や性格、ライフスタイルなどを詳細に定義することで顧客像の解像度を上げ、広告や商品開発の精度を高めます。
また、チーム間の認識のズレをなくすことで、その遂行をスムーズにすることができるのです。
ペルソナの具体的な定義

特定の一人を定義するといっても、なかなかイメージするのは難しいよね

ペルソナの設定には、ある程度基本の方があるので、まずはそれに従って設定しみたらいい。
- 名前・年齢・性別・居住地・家族構成・会社/学校などの基本情報
- 平日、休日それぞれの過ごし方などの行動パターン
- ライフスタイル
- デジタルライフや情報収集源
- 性格や価値観
- 好きなもの/興味を持っているもの
- 抱えている悩み/課題
- 潜在的な欲求/夢/目標
これらを設定していくときに陥りがちな誤りとして、「平均的」な人物像を作ってしまうことです。
「平均」というものは、あくまで概念であって現実には存在しません。
平均的な人物やステレオタイプに基づいたペルソナ像に基づいた広告や商品設計は、万人にとって「そこそこ」良いものになるかもしれませんが、誰にも刺さらない薄味のものになってしまいます。
自分の内面や身近な人を参考にしながら、特定のニーズや行動パターンを持つ特徴的な人物像を定義するようにしましょう。

具体的なペルソナの設定例はこの書籍でも学べます。

唐突な広告…
みんなに好かれようとすると誰にも響かない
これはマーケティングを学ぶ上でよく耳にする鉄則ですが、何も現代になって言われ始めたことではありません。
実は2600年も前のイソップ寓話の中にも、「皆を喜ばそうとしてごらんなさい。誰も喜ばせることはできないでしょう」という一節があります。れは時代を超えた、人間心理の不変の原則といえるでしょう。
この原則を実践する際に、ペルソナと並んで有効なのが、著名なマーケターである西口一希氏が提唱した「N1(エヌワン)分析」です。
ペルソナが架空の顧客像を描くのに対し、N1分析は「実在する顧客」を徹底的に掘り下げ、そのインサイトを発掘する手法です。
共通しているのは「顧客スタート」である点。
そして重要なのは、顧客の背後にある「目に見えないもの」を捉える力です。
以前紹介した「Underconsumption Core」の記事でも説明しましたが、その時代の「精神」や「空気感」は常に移ろっています。
ひとりの人間の深層心理も、このような時代の精神や空気感は、どちらも目に見ることはできません。
目に見えない空気を感じ取り、言葉にならないニュアンスを読み取る。
AIが進化すればするほど、このような人間臭い洞察力が、大きな武器になるはずです。



